🌸 桜内文城の原点 公会計で国家経営を変える
皆さん、こんにちは。桜内文城と申します。
坂本龍馬が残した言葉に「これより天下のことを知る時は、会計もっとも大事なり」というものがあります。
私が政治家を志した原点は、「公会計で国家経営を変える」ことにあります。
自分がいかに小さな存在であろうとも、世の中を変えることができると思うことからすべてが始まります。どんな田舎に生まれようとも、貧しくとも、できない理由を探すのではなく、どうすれば世の中をあるべき姿に変えることができるのかを考えようではありませんか。
公認会計士の使命とは何か。公認会計士は、金融・資本市場の番人と呼ばれます。上場企業の財務情報の信頼性を確保することを通じて、誰にでも開かれた自由な金融・資本市場に流れ込む投資家のパブリック・マネーを守る立場にあるからです。
であれば、政府に税金として流れ込む本物のパブリック・マネーを守るべき使命も公認会計士は帯びているはずです。
平成27年度政府予算案は、一般会計96兆円、特別会計を含む歳出純計237兆円。これに対する税収は僅か54兆円。本年3月末時点での政府の債務残高1,144兆円。来年度はこれに新規国債発行額37兆円が上乗せされるだけでなく、退職給付引当金に相当する公的年金の積立不足額721兆円が存在します。
公認会計士の視点からすれば、完全な破綻企業です。では、この絶望的な財政をどのようにコントロールし、立て直していくのか。企業経営における財務戦略を担う公認会計士は、国家経営という公会計の領域においても重要な役割を果たすべきだと思います。
政治家になるには
私が政治家という職業を意識し始めたのは高校2年生の秋、一冊の本に出会ったことがきっかけです。
それは、吉川英治の「三国志」。1,800年前の壮大な歴史物語に夢中になりました。漢王朝の再興という高い志を掲げる劉備玄徳。そして、関羽、張飛、孔明らとの友情。多くの困難を乗り越えて志を遂げようとする彼らの姿に憧れました。
「自分も人として生まれた以上、歴史に自らの意思を刻みこむような大きな仕事、世の中を大きく変えるような仕事をしてみたい」。そんな思いから漠然とですが、政治家を志すようになりました。
しかし、自分を取り巻く現実は、政治家になるという夢を実現するには程遠い状況でした。
政治家になるには、地盤、看板、カバンという、いわゆる「三バン」が必要だといわれます。まず地盤とは、政党や個人後援会による網の目のような人間関係、組織を意味します。次に看板とは、世襲候補として親の名前が広く知られている、あるいはテレビなどで活躍して知名度があることを意味します。最後にカバンとは、ズバリお金のことです。私には、地盤、看板、カバン、何もない。文字通りナイナイ尽くしの出発でした。
さて、東大に入学したばかりの春。
父から「遠縁だが地元代議士の秘書をしている者がいるので、一度挨拶に行ってはどうか」という連絡がありました。そこで、衆議院の議員会館にノコノコと出掛けて行った訳です。
比較的暇な時期だったのか、その叔父さんに国会議事堂の本館にも案内してもらい、生まれて初めて赤絨毯を踏みました。「自分の目指すべき場所は、まさにここなんだ」と直感した、その時の感激は今も忘れられません。
そこで、つい調子に乗って「叔父さん、僕、政治家になりたいんだけど」と尋ねたら、その叔父さんからその後の人生を決める言葉が飛び出しました。「うちは貧乏な家系だから、東大を出たぐらいではダメだ。大蔵省に行け。運があれば政治家になれるかもしれない」。その言葉を真に受けた私は、その後、猛勉強を重ねて大蔵省の内定を勝ち取りました。
統治機構改革、改憲論 5年間の左遷
大蔵省での振り出しは、役所全体の筆頭課とされる大臣官房秘書課。3年目にはアメリカのハーバード大学J.F.ケネディ大学院に留学。ところが、順風満帆にみえた大蔵官僚時代もほどなく暗転しました。
それは入省6年目の春。国家の統治機構改革、改憲論を月刊誌に発表したことがきっかけです。
昭和16年の日米開戦の際もそうだと思いますが、「なぜ、個々の官僚は真面目に仕事をしているのに、大局的な観点からすれば国益を大きく損なう結果を招いてしまうのか」。「なぜ、国会議員はその最大の権力である『立法権』の行使を官僚に丸投げするのか」。国政が機能麻痺に陥る時、いつも最大の損害を被るのは国民です。
そのような問題意識から憲法上の統治機構改革を提唱したのですが、当時の事務次官をはじめ役所の幹部からすれば、若手の跳ねっ返り者の「経営陣に対する批判」と映ったのでしょう。その後、私は5年間の左遷の旅に出ることとなりました。ふざけるな「3日でちくしょうって1000回は言った」
今思えば、30代の左遷と、公会計の研究者への転職は最高の経験でした。
30代は人生の中で最も創造性の高い仕事ができる時期だと思います。私の場合、統治機構の仕組みや政府のマクロ経済政策の経済全体への波及効果についてロジックを積み重ね、それらを数字で表現する公会計というニュー・フロンティアに巡り会ったことが人生を変えました。
コーポレート・ガバナンスとコーポレート・ファイナンスは、コインの表裏の関係にあります。国家の統治機構という意思決定の仕組み、そして政府の意思決定を規律すると共に、財政運営の責任を数字で明らかにする公会計。そこには複式簿記の厳密なロジックが存在するのです。
故郷・愛媛4区へ 「どぶ板選挙」の悪戦苦闘
そして8年前、42歳の誕生日を目前に控えた私は、生まれ故郷の四国・宇和島に戻り、国政を目指して一人だけで政治活動を始めました。
私には、自分が生まれ育った故郷しか帰る場所はありません。人口減少と経済の縮小で衰退する故郷を見捨てることができますか。国も地方も危機的な財政状況に陥っています。これをどうやって立て直すのか。
私が、公会計情報を活用した国家経営を実現するために開発した会計システム、国家財政ナビゲーションシステム「国ナビ」は、地方公共団体の経営力を強化する「自治ナビ」としても応用できます。私にとって、「国ナビ」と「自治ナビ」は、「故郷を守ることこそ国家を守ること」という志に直結します。
厳しい選挙戦になることは当然予想していましたが、どれほど苦しくとも自分の生まれ故郷であれば生涯を懸けて何度でも挑戦することができる。その覚悟は今も変わりません。
しかし、最初から本当に厳しい現実の壁に直面しました。
盤石の保守地盤を誇る自民党王国において、いわゆる地盤、看板、カバン、何一つないゼロからの挑戦。無所属候補として、政党に頼ることもなく、純粋なボランティア組織としての後援会の皆様方にご支援をいただきながら、文字通り地べたを這いずりまわるような「ドブ板選挙」を展開しました。
選挙の神様と言われた田中角栄元総理は、選挙に当選したければ「戸別訪問3万軒、辻説法5万回」やらなければダメだという名言を残しています。
さて、2年間、無所属候補として活動を続けたところで迎えた2009年8月の衆議院総選挙。政権交代の熱気の中、愛媛四区では自民党候補が当選、民主党候補が比例で復活当選。無所属候補として初挑戦した私は三位で落選。
そして翌2010年夏の参議院選挙でみんなの党公認で出馬し、何とか初当選を果たしました。地元に戻ってからの浪人生活3年が過ぎようとしていました。
政府の意思決定のあり方を根本から変える議員立法と予算修正案の提出
44歳から49歳に至る昨年11月までの4年半にわたる国会議員時代、立法府の議員として思う存分仕事ができたと思います。
残念ながら野党議員でしたので、ごく稀にしか議員立法が可決成立することはなかったのですが、自ら起案して提出した議員立法は20本以上に上ります。
私が手掛けた議員立法のうち、代表的なものとして、国家経営に必要不可欠な財務諸表を作成し、開示を義務付ける財政責任法案があります。また、公的年金制度を現在の賦課方式から積立方式に転換することにより、世代間格差を是正する法案も提出しました。
さらに、憲政史上初となる一般会計・特別会計全体の予算修正案と予算ベースでの連結財務諸表も2年連続で提出することができました。
これらの法案や予算案は、すべて国家経営に関する政府の意思決定のあり方を根本から変えることを目的としています。
本来、公会計情報の作成や開示がなされない国家経営など考えられません。公認会計士の皆さんにとって、キャッシュの収支しか情報がないような企業経営なんか想像もつかないでしょう。しかし現実には、明治以来150年以上にわたって、発生主義・複式簿記に基づく財務諸表や公会計情報が作成されることはありません。
例えていえば、1億2千万人もの乗客を載せたジャンボジェット機の操縦席に、どういった高度で地図上のどの位置を飛んでいるのか、そしてどんなスピードなのかを示す計器類が一切なく、ただ一つ燃料計だけが付いているようなものです。
目に見えないものをコントロールすることはできません。財政運営のすべてを財務官僚の「勘」に頼る他はなかったのです。逆にいえば、客観的な数字に基づく合理的な経営力を発揮できる公認会計士にとって、「公会計情報に基づく国家経営」というニュー・フロンティアが目の前に出現しているのです。
実は、公会計制度改革の最大の抵抗勢力は財務省です。
なぜなら、財務省の最大の権力の源泉は予算編成権にあるのですが、公会計基準に従い、予算ベースでの財務分析とシミュレーションが可能な財務諸表が作成・開示されたなら、彼らの裁量の余地はすべて政治家に奪われてしまうからです。
私は、公会計制度改革を実現するため、10年以上孤独な闘いを続けてきました。しかし、これからはぜひ若手公認会計士の皆さんと一緒に、公会計で日本の国家経営を変えていきたいと思います。ぜひ皆さんのお力をお貸しください。
国家経営力 想像力、説得力、論理力
私は、いかなる時代にあっても、政治家に求められるのは「国家経営力」、すなわちビジョンを実現する力であると考えます。「国家経営力」は、次の3つの要素から成り立っています。
第一に、まるで見てきたかのようにリアルにビジョンを思い描く「想像力」。
第二に、ビジョンの実現に向けて人々のベクトルを合わせる「説得力」。
そして第三に、ビジョン実現までの工程を精密に設計する「論理の力」。
この3つの要素を身に付けている公認会計士こそ、「国家経営」というこの世で最も崇高な任務に堪えられるのではないでしょうか。
実は、本日お集まりの若手公認会計士の皆さんのパワーをお借りしたい新規分野があります。それは、地方公会計です。
総務省は、私が起案した会計基準をベースとして、2017年度までに全国47都道府県、1,718市町村、合計1,765の全ての地方公共団体において、統一的な基準による財務諸表を作成・開示することを義務付けました。
未だ財務諸表監査が義務付けられている訳ではありませんが、まずは全ての地方公共団体の財務諸表の作成と開示に向けて皆さんのお力をお貸しください。ぜひとも公認会計士の「国家経営力」を国や自治体といったパブリックセクターで発揮しようではありませんか。
2度目の落選 理屈で勝って、選挙で負けた
そして迎えた昨年12月の衆議院総選挙。必勝の体制で臨んだのですが、結果は落選。この2度目の落選により、すべてを失った今、私自身、原点に立ち返る他はありません。
国会議員として公会計で国家経営のあり方を根本的に変えたい。逆説的ですが、そのために構築してきた公会計の理論や実践は、結果として有権者のご理解を得るものではなかったということです。
では、どうすれば自分の志を有権者に共感してもらえるのか。そして選挙で「桜内文城」と投票していただけるのか。
落選直後より後援会の方々からは大変厳しいご意見をいただきました。「単にこれまでのやり方を繰り返しても結果は変わらない」、「真の敗因を突き止め、そこを改めない限り希望は見えてこない」。
私自身、そのようなご意見を重く受け止め、自分なりに考え抜いた結果、今回の落選を機に「私自身が変わる」他はないとの結論に達しました。嫁さんだって変えられないんだから、有権者を変えるなんて出来ない。自分が変わるしかない。
再び、ゼロからの挑戦をします
この「私自身が変わる」という決意を胸に、再び、ゼロからの挑戦をします。
8年前の原点、すなわち「故郷を守ることこそ国家を守ること」という志に立ち返り、有権者お一人お一人との間で人としての信頼関係を築いていきたいと思います。
今後、再び「ドブ板選挙」を徹底的に展開し、年間1,000回の膝詰め座談会を実施すると共に、各地域に泊まり込みながら有権者の皆さんとの裸の付き合いを通じて「故郷を守ることこそ国家を守ること」という志に共感していただく同志を一人でも多く増やしていきたいと思います。
実は、このプレゼンターのオファーを頂いたのは、昨年12月の落選直後でした。敗戦処理と後始末で首が回らない時期に正直なところ「自分の身一つどうにもならないときに、若手公認会計士の皆様に自分が何を語ることができるのだろう」とも思いました。
しかし、こんな時にわざわざお声掛けいただいたのも何かのご縁だし、何よりこのプレゼンの準備を通じて自分のこれまでの人生を振り返り、再び、ゼロから国政に挑戦する決意を自ら再確認する機会になるのではないかと思い、お引き受けすることにしました。
本日、この瞬間から、私自身の人生を再出発したいと思います。
そして、皆さんにお願いがあります。この国のために。一人でも多くの仲間が声をあげて欲しい。もっと公会計制度改革を進めろと。そして、一緒に取り組みたい人は私に声をかけて欲しい。もし、何をやろうとしているかよくわからないという人がいたら、是非私の考え方をまず聞いてほしい。違うと思ったらアドバイスをください。
私は、生涯かけてでも、国政を再び目指す覚悟を固めました。まだあきらめません。ガムシャラに進むことしか出来ない私でも、公認会計士の皆さんと共に取り組めるなら、こんな心強いことはありません。
せっかく公認会計士になったのだから、国家のために働きたい、そんな思いをお持ちの方が増えたら嬉しいですし、今日が一人でも多くの仲間がこの公会計制度改革に取り組むきっかけになっていたら幸いです。皆さん、お互いそれぞれの志を実現するため、共に頑張りましょう。