円安阻止のために日銀は政策金利を引上げることができるのか? | 桜内ふみき 公式サイト

円安阻止のために日銀は政策金利を引上げることができるのか?

もともとFacebookに投稿していた動画とその解説記事ですが、原因不明ながら先月に続き今月もアクティビティログごと消失するという事件がありました。アルゴリズムの問題だと思いますが、時間をかけて書いた記事が消失してその原因も不明ということでは、Facebookを信用することはできません。

2日近く経ってなぜか復旧しましたが、今後はWordpressに記録した上でFacebookに投稿する形に改めようと思います。


YouTubeにコメントをいただいたので、下記の返信を投稿しました。長文ですが、重要な論点なのでFacebookにも引用します。

結論から言えば、円安を阻止するために日銀が政策金利を引上げることは可能です。僕自身も、20年以上も続けてきたゼロ金利政策が総需要やGDPの増大にほとんど寄与しなかったという意味も含め、今、国民生活に悪影響を及ぼしている円安を阻止するためには、日銀が政策金利を引上げるべきだと考えています。

YouTubeにコメントをいただいたので、下記の返信を投稿しました。長文ですが、重要な論点なのでFacebookにも引用します。

結論から言えば、円安を阻止するために日銀が政策金利を引上げることは可能です。僕自身も、20年以上も続けてきたゼロ金利政策が総需要やGDPの増大にほとんど寄与しなかったという意味も含め、今、国民生活に悪影響を及ぼしている円安を阻止するためには、日銀が政策金利を引上げるべきだと考えています。

しかし、おそらく日銀がそのような判断をすることはないとも思います。その辺がご期待に添えなかった点だと思いますが、主に3つの理由があります。動画で話すにはテクニカルに過ぎる内容ですが、ぜひお読みください。

① まず、日銀と財務省の力関係です。本来、金融政策と為替政策は一体のものなのですが、日本では国内の金融政策を所管する日銀とは別に、外為特会の運用を行う財務省国際局が為替政策を所管しています。そして、財務省は財政政策を所管しているので、金利上昇による国債費の増大を本能的に嫌います。従って、財務省の意向に逆らってまで日銀が金利引上げの判断ができるとは考えにくいと思います。

② 黒田総裁は国会で「政策金利が上がると、日銀当座預金に対する付利の引き上げによって支払い金利が増えてゆくことから逆鞘になる可能性が論理的にはある」と答弁しました。同様に、白川前総裁も著書「中央銀行」p.399の中で『議論の本質に焦点を絞るために中央銀行が債務超過になるケースを取り上げる。さらに、国債の売却は行わず、付利金利の引き上げで対応するケースを考える。この場合、債務超過が発生するとすれば、2つの要因で発生する。ひとつは中央銀行保有国債の評価損であり、もうひとつは付利金利引き上げに伴って生じる逆ざやによる期間損益の赤字である。(中略)問題はここにとどまらない。まず、中央銀行は当座預金の付利金利を引き上げなければならない。景気・物価情勢が改善しても付利金利を引き上げなければ、インフレが起こるからである』と述べています。

しかし、現実には、政策金利と日銀当座預金への付利を連動させる理論的必然性はありません。政策金利は金融機関にとっての調達金利であり、日銀当座預金への付利は金融機関にとっての運用金利だからです。実際、日銀が裁量的に決める当座預金への付利は必ずしも政策金利と連動していません。実態としても日銀当座預金の62%が▲0.1-0.0%金利となっています。

日銀の新旧総裁のお二人が上記のような認識であるとしたら、財務省の横槍がなくとも、日銀が自発的に政策金利を引上げることは期待できないと思います。

③ マスコミだけでなく、専門家であるはずの日本の経済学者も金融政策をきちんと理解しているとは思えません。例えば、リフレ派とされる方々が日銀政策委員の過半を占めていますが、日銀の異次元緩和を主導した彼らは、「マネーストック=信用乗数×マネタリーベース」という方程式を基礎として、日銀の負債である日銀当座預金(マネタリーベース)を大幅に増やせば、世の中のお金の総量であるマネーストックも大幅に増やすことができると考えてきました。しかし、マネタリーベースは2013年2月末の131兆3043億円から2022年3月末には688兆327億円と5.24倍にまで激増しましたが、その間、マネーストック(M3)は2013年2月末の1143兆4516億円から2022年3月末に1549兆6178億円と1.35倍に増えただけです。要は、マネタリーベースを増やせば増やすほど、それに反比例して信用乗数が低下したのです。

その原因は明らかです。金利やマネタリーベースの水準は、お金の総量であるマネーストックの決定には会計的に無関係なのです。マネーストックを決定するのは、あくまでも会計恒等式「[借方]銀行システムの「外部」に対する金融資産(投融資)の変動≡[貸方]マネーストックの変動」です。会計学的な意味で、マネーストックやマネタリーベース、そして金利についての理解が十分でなければ、日銀が政策金利を引上げることは理論的にもできないと思います。

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