この程、同文館出版から日本監査研究学会リサーチ・シリーズXIXとして「監査領域の拡大を巡る問題」が出版されました。
僕の担当は、第12章「海外の非営利組織の監査制度(監査の利活用を含む)の事例研究を通じた, 日本における監査領域の拡大可能性について」(pp.207-222)です。長いタイトルですが、学会から与えられたテーマなので、どうかご理解くださいませ(苦笑)。
非営利組織には、多種多様な形態が存在します。医療法人や社会福祉法人といったものから、自治会や町内会、NPO法人など、実は身近な存在です。広くは政府や地方公共団体といった部門も非営利組織の一形態といえます。
そして、国内外を問わず、非営利組織の場合、マネジメント(組織経営の意思決定)とガバナンス(意思決定の規律付け)の機能が明確に分離されていないため、マネジメントによる内部統制の無効化や、横領等による資金の流出が頻繁に発生する傾向にあります。
ガバナンスとは、株式会社であれば株主による経営者(マネジメント)の意思決定の規律付けを意味します。アメリカの上場会社では、独立社外取締役が過半数を占める取締役会(Board)が、その会社の統治責任者(TCWG: Those charged with governance)として、最高執行責任者(CEO: Chief Executive Officer)のマネジメントに関する意思決定の是非を株主の利益を代表して規律する機能を担っています。他方、日本の会社法では、代表取締役や取締役会がマネジメントに関する意思決定の主体とされていることから、本来であればドイツ法と同様に監査役または監査役会こそが、マネジメントの主体である代表取締役や取締役会の意思決定を規律する機能を担うべきなのですが、通常、日本の株式会社における監査役は、サラリーマンの出世競争で取締役になれなかった者が就任するポストとされており、結果としてガバナンス(意思決定の規律付け)不在の状態に陥っているのです。
ましてや非営利組織の場合、組織構造上、 ガバナンス(意思決定の規律付け)不在の状態こそが普通です。そこで、せめて公認会計士監査を義務付けることによって、最低限、財務面でのガバナンス(意思決定の規律付け)の機能を発揮できないか?ということがテーマとなった次第です。
ご興味を持たれる向きは、ぜひお読みください‼‼